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Classical Guitar Maker

―Ⅲ― ナット・サドル上にかかる力

前頁のⅠ~Ⅱで、張力(弦の方向の力)は理論上ではギターの構造変化に影響を受けないことを証明しました。

その一方で、ヘッドの角度や弦高の変化はナット・サドル方向にかかる力を変化させます。

前項Ⅱで求めたF1の値  f1=2f0sinθ/(1+2cosθ)   ※f0は実測値

はナット・サドルにかかる抗力を表します。 ナット・サドルにかかる弦の角度をθ、F0を張力実測値として、

各弦計算してみます。

F0実測値

サドル上の垂直抗力

弦高の変化でサドルにかかる力が変化するかを計算上で確認します。

下図のように弦高が高くなればθも大きくなります。

ギターのブリッジの設計で大きく変わりますが、

θ=45°(弦高3㎜)とθ=50°(弦高4㎜)

とした場合のF1(垂直抗力)の変化を計算しました。

12フレット上で弦高1㎜上げると(サドル上で2㎜上昇)、

θは50°になりF1値は各弦で約0.5~0.6kg上がることがわかります。 

そして1~6弦トータルでは3.32Kg上昇しました。

上図はイメージですが、F1は弦に垂直にはたらく力なので、

弦高を上げると力の方向はブリッジ真下の方向から、サウンドホール側に力が増えつつ移動していることがわかります。

この変化は表板の振動を変化させるに十分な要素であると考えます。 

また、サドルにかかる力が増えるということは、弦の振動をより多めに表板に伝えていることになります。

同様にナットでも、糸巻きの軸との関係で計算できます。

ナットではヘッド自体の角度と、弦のナット~糸巻きの軸までの角度を考慮する必要があります。

上図で示すとおり、1弦軸と6弦軸はナットに近いので他と比べ角度が大きくなります。(16.5°)

3弦軸と4弦軸はナットから遠いので角度は浅くなります。(11.5°) 

ヘッド角8° と 16°のときのF1を求めると

トータルで9.98-6.37Kg=3.61Kg

となりナットにかかる力は3.61Kg上昇しました。この変化もギター製作にとって重要な変化であると思います。

 

 
 
Ⅰ~Ⅲまでの結論
「ヘッド角や弦高が変化したことによる音や弾き心地の変化を演奏家が感じるのは、張力の変化ではなく、ネック及びボディーの振動の変化(鳴り方の変化)であることが大きな要素として言える。」

時間がかかりましたが結論はでました。 振動の変化については高度な装置が要ることと思います。またいずれの機会に報告しようと思います。

ご協力くださった方、特に柏木さんありがとうございました。

2017年3月